『五十一回目の夜』
 役所の仕事を終え、一杯ひっかけた住民課の東とすぐやる課の龍之介。東の部屋へとやってくる。だが、そこにはいるはずの東の奥さんの気配がない。二ヶ月前に家出してしまった彼女がどこへ行ったのかわからない。気がつくと東は、妻の交友関係も、なにも知らなかった。妻の居場所を調べようのない東。五十一日目の夜の話。

 女房に限りませんが、たとえば、自分がつきあっている彼女の事を、みんなどれだけ詳しく知っているものなんだろう? というのがそもそもの始まりでした。女房の友達にはもちろん、何人も会ったことはありますが、電話番号を知っているわけではありません。名前だってあやふやで、あだ名しか知らなかったり、リクルートで働いているとか、趣味はスノボーでといった断片的な情報しかもっていなかったりします。年賀状の入ったファイルと携帯を持って出ていかれてしまったら・・打つ手はありません。そして、友人ならまだしも、会社の人間に女房が出ていった、ということを、話す機会もないまま時が過ぎていったらどうだろう? それが日常になってしまったために、逆になにがおかしくて、なにがまともなのか? という思考もあやふやになっているとしたら・・ そういった要素を並べていって作った芝居です。

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